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はじめに:なぜカタログは記憶に残らないのか?
多くのカタログは、製品情報やスペックが淡々と並べられた構成になっています。確かに情報としての正確さや網羅性は大切ですが、それだけでは顧客の記憶や感情に残りにくいのが現実です。
いま、求められているのは「情報」だけではありません。「なぜこの製品が生まれたのか」「どんな人が、どんな想いで作っているのか」といった「感情に訴える要素」です。ストーリーを通して顧客の共感を得ることで、カタログが単なる販促ツールから、心に残るブランド体験へと進化します。
本記事では、「カタログ×ストーリーテリング」の考え方と、その活用によってブランド価値をより深く伝える方法をご紹介します。
「カタログ✕ストーリーテリング」とは?

情報伝達から物語体験へ
「カタログ✕ストーリーテリング」とは、単なる製品情報の羅列ではなく、その製品が生まれた背景や、そこに込められた想い、実際のエピソードなどを通じて、読み手に「物語としての体験」を提供する手法です。
カタログを読むこと自体がひとつのストーリーを追体験するような時間になることで、製品やブランドに対する理解と関心がより深まります。
感情に訴えるカタログの意義
人は理屈ではなく「感情」で動く生き物です。スペックや価格だけでは語りきれない価値を、ストーリーを通じて感じ取ることで、読み手の心が動きます。製品やブランドに共感し、感情移入が起きることで、自然と購買意欲も高まりやすくなります。
カタログが「流し読みされる情報集」から「心に残り、何度も見返したくなる一冊」へと変わるためには、この「感情を動かす仕掛け」が欠かせません。
「ブランドの歴史・現在・未来」を語る
創業の想いや製品開発の苦労、転機となった出来事、そしてブランドがこれから描こうとしている未来像──こうした時間軸に沿ったストーリーを丁寧に伝えることで、商品そのものに対する理解だけでなく、その裏側にある“深い価値”や“共感の核”を届けることができます。
ただモノを紹介するだけではなく、「なぜこの商品なのか」「なぜこのブランドなのか」といった問いに、自然と答えを与えるのが、ストーリーテリングの大きな特長です。
カタログにストーリーを取り入れるメリット
顧客の興味を引く「フック」になる
読み手の関心を引くには、最初の一歩が肝心です。無機質な情報よりも、印象的なエピソードや心に残る一言があることで、「続きが気になる」「もっと知りたい」と思わせるきっかけをつくれます。
ストーリーは、カタログ全体の導入として読者を引き込む力を持っています。
ブランドロイヤルティを高める
企業の価値観や製品開発の裏話に共感した顧客は、単なる購入者から「ファン」へと変わります。
ファンはブランドに継続的な支持を寄せるだけでなく、SNSなどを通じて自ら発信者にもなってくれます。こうしたエンゲージメントは、長期的なブランドの成長にもつながります。
競合との差別化ができる
製品のスペックや価格はどうしても比較されやすく、埋もれてしまいがちです。しかし、「物語」は模倣されにくく、そのブランドならではの背景や価値観を表現することができます。オリジナリティあふれるストーリーによって、他社にはない印象を顧客に残すことが可能になります。
購入という行動を後押しする
理屈だけでは動かない顧客の心に、物語が響くことで「この製品にしよう」と思わせる力が生まれます。製品にまつわるストーリーが、読み手の感情や記憶にリンクすることで、製品に対する「納得感」や「親しみ」が高まり、購買行動の決め手となるのです。
実践ステップ:カタログにストーリーテリングを取り入れる方法

自社の「コアストーリー」を定義する
まずは、自社の核となるストーリーを明確にしましょう。企業や製品の本質的な価値を伝えるには、どのような想いや背景があるのかを深掘りすることが重要です。
以下のような要素を手がかりにすると、自然と「語るべき物語」が見えてきます。
- 企業理念や創業ストーリー
なぜこの事業を始めたのか。どんな社会課題に向き合い、どんな未来を目指したのか。その「原点」には、共感を呼ぶ力があります。 - 製品開発の原点
この製品は、どんな困りごとやニーズに応えるために生まれたのか?その誕生の背景には、開発者のひたむきな情熱や試行錯誤があるはずです。 - お客様に届けたい理想の姿
この製品を手にしたとき、ユーザーにどんな体験をしてほしいのか?どんな生活の変化を実現したいのか?未来に向けたビジョンを言葉にすることで、より強いメッセージが伝わります。
顧客の共感を呼ぶ「プロット」を設計する
物語に引き込むためには、構成がとても大切です。効果的なストーリーには「起承転結」や「山場」があり、読み手の感情を揺さぶる流れが必要です。
以下のような4つの要素を意識しながら、プロット(物語の設計図)を組み立ててみましょう。
- 目指したこと(理想や希望)
例:こんな世の中を変えたいという開発者の願い。夢や信念から物語は始まります。 - 直面した課題や障害(挫折)
例:途中で立ちはだかった壁、失敗した試作など。想定外の問題や現実の厳しさが、物語に深みを与えます。 - 課題解決のターニングポイント(解決)
例:チームのアイデアや顧客の声が突破口に。諦めかけたときに見えた光が、読者の共感を生み出します。 - 得られたもの(成長・意外な発見)
例:製品だけでなく、社内の価値観も変わった。結果として、想像以上の成果や気づきが生まれたという“余韻”が読後感を高めます。
ヒント:失敗や苦労も魅力的なストーリーになる
完璧な成功談よりも、困難を乗り越えたエピソードのほうがリアリティがあり、読み手の心を動かします。壁にぶつかりながらも一歩ずつ前進する様子は、多くの人にとって共感しやすいテーマです。
たとえば、技術的な課題をクリアするまでの葛藤や、初期のプロトタイプがうまくいかなかった話、ユーザーの意見によって方向性を大きく変えた経緯など。単なる「成功の歴史」ではなく、「感情の起伏」があることで、読者は自然とその物語に引き込まれます。
こうした構成をうまく活用すれば、製品やブランドの印象を深く心に刻み込む、「ワクワクするようなカタログ」を実現することができるでしょう。
カタログ内にストーリーを効果的に組み込むポイント
ストーリーをただ載せるだけではなく、「どこに・どんな内容を・どう配置するか」によって、読者の印象や行動が大きく変わります。
カタログの構成に合わせて、以下のようなパートごとに物語を挿入することで、より自然に、効果的にメッセージを伝えることができます。
挿入ポイントの工夫
パート | 物語を入れる内容の例 |
巻頭・巻末 | ブランド全体の「顔」となる部分。ここでは企業のビジョンや創業者の想い、ブランドの歩んできた歴史とこれからの展望など、全体の世界観を形づくるストーリーを配置します。カタログの冒頭で心をつかみ、巻末で余韻を残すような構成が効果的です。 例:企業ビジョン、創業者の想い、ブランドの世界観 |
各章の導入文 | 製品カテゴリごとのテーマや、そのカテゴリがどんなニーズや課題に応えているのかをストーリー仕立てで語ります。「なぜこのカテゴリがあるのか」「どんな背景があるのか」といった物語を添えることで、次のページへの興味を高めます。 例:カテゴリごとのテーマ、解決すべき課題 |
製品紹介の冒頭 | 単なるスペックの羅列ではなく、「この製品がどのようにして生まれたのか」「どんな想いが込められているのか」「実際に使うとどう変化があるのか」といった短いエピソードや情景を盛り込むことで、製品への親しみや感情移入が生まれます。 例:開発エピソード、使用シーン、ユーザーの変化 |
コラム/特集 | 製品に使われている素材や技術の裏側、開発者や職人のこだわりなど、普段は見えにくい部分を深く掘り下げて紹介します。製品の価値や信頼性を高めるだけでなく、読み物としての魅力も加わります。ストーリー性のある特集は、カタログに深みを与える重要なパートです。 例:素材や技術にまつわる深掘り記事、職人インタビュー |
お客様の声・導入事例 | 実際に製品を使用しているユーザーのリアルな体験談は、最も説得力のあるストーリーの一つです。購入前の悩みや導入後の変化などを、本人の視点で語ることで、読み手自身の未来をイメージしやすくなります。社会的証明としての効果も大きく、信頼感を醸成します。 例:実際の使用シーンに基づくリアルな体験談 |
ストーリーを支える表現技法
ストーリーの魅力を最大限に伝えるには、「語り方」にも工夫が必要です。
言葉、ビジュアル、構成、それぞれの要素が連携することで、読み手の心に残るカタログが完成します。
言葉の力:一言に想いを込める
キャッチコピーや小見出しにも物語性を持たせることで、読み手の心に残る印象的な導入が可能になります。
製品の背景や想いを、短くても力強い言葉で表現することが重要です。
ビジュアルで語る:感情を引き出す見せ方を
写真やイラストは、製品の魅力だけでなく、その背景にある情緒や価値観も伝えられます。
使用シーンや開発者の姿をビジュアルで描くことで、より深い共感を生みます。
図解で伝える:複雑な背景をわかりやすく
製品の特徴や開発プロセスなど、文字だけでは伝えづらい情報は、インフォグラフィックや図解で補足。
理解を助けながら、視覚的にも飽きさせない構成を目指します。
レイアウトの工夫:物語を自然に読み進ませる
視線の流れを意識したデザインによって、カタログの中でストーリーが自然に展開されるように導きます。
情報の配置や余白の使い方が、読みやすさと印象を左右します。
外部連携:二次元バーコードで「続き」を届ける
カタログ紙面では伝えきれない情報や開発秘話は、二次元バーコードを通じてWebや動画で補完。
オフラインとオンラインをつなぐ導線が、ストーリー体験をより豊かにします。
まとめ:物語がカタログを変える
カタログは、もはや単なる情報集ではなく、ブランドの想いや価値観を届ける「体験型メディア」として進化しています。製品の背景や開発のストーリーを丁寧に伝えることで、読み手の心に残る、印象的な一冊に生まれ変わるのです。
物語には、数字やスペックでは伝えきれない力があります。感情に訴えかけるストーリーは、顧客の共感を呼び、ブランドとの距離を縮め、最終的な購買行動を後押しします。
私たちは、カタログ制作のプロとして、企業が持つ「語るべき物語」を丁寧に掘り起こし、構成・デザイン・言葉の力でその魅力を形にします。カタログを通じてブランドの世界観を伝えたいとお考えであれば、ぜひご相談ください。