会社案内は、単なる情報の羅列ではありません。
企業の想いやビジョン、強みを伝え、採用や営業の現場で“企業の顔”として活躍する大切なツールです。
どんな情報を盛り込み、どんな形で伝えれば、見る人に伝わるのか――
このガイドでは、会社案内を初めて作る方でも取り組みやすいように、目的の整理から構成の考え方まで、わかりやすく解説していきます。
目次
会社案内は何のために作る?目的別に整理しよう
会社案内を作る目的は一体何でしょうか?会社案内には、大きく分けてふたつの用途があります。まずは会社案内が持つ目的について簡単に触れていきましょう。
採用目的
会社案内のひとつ目の目的が、採用です。
企業のビジョンやミッション、その他の特徴や働きがいを詳細に紹介することで、求職者が自分の価値観やキャリア目標と一致するかどうかを判断しやすくなります。写真などでスタッフの働く姿を見せることで企業の魅力を効果的に伝え、企業にマッチした人材を引きつけることに役立てられます。
営業目的
ふたつ目の目的が、営業です。
会社案内には、企業の歴史、実績、受賞歴、お客様の声などを記載することも多々あり、これらの情報が企業の信頼性をアピールすることにつながります。特に新規顧客の手に渡れば、イメージ付けとして効果を生み、信頼感の醸成に役立つことでしょう。
会社案内に盛り込むべき内容とは?
会社案内は、製品カタログやチラシとは大きく異なります。企業の魅力を伝え、製品やサービスを紹介し、競合他社と比べた際の自社の強みをアピールします。読者としては、顧客はもちろん、ステークホルダー、株主、そして従業員など、広い関係者が想定されるでしょう。
会社案内を作るとき、つい「自分たちが伝えたいこと」ばかりを盛り込みがちですが、実際には「読み手が知りたいこと」がきちんと載っていることが大切です。
たとえば、以下のような情報があると、初めて見る人にも伝わりやすくなります:
- 会社の基本情報
設立年、所在地、従業員数、資本金、事業内容などの基本データ。 - 経営理念・ビジョン
企業の使命や目標、価値観を明示し、企業がどのような社会的使命を持ち、どのような未来を目指しているのか。 - サービス・製品の概要
提供しているものが、どんな人の役に立つのか。メリットや用途。 - 実績や導入事例
過去の成功事例や顧客の声。 - 問い合わせ先情報
電話番号、メールアドレス、所在地、担当者名など、具体的な連絡先。
こうした情報を「自分たちの言葉」で伝えることが、共感や信頼を生むきっかけになります。
デザインが語る「会社の姿勢」
会社案内ではデザインやブランドストーリーを利用して、ブランドイメージを形成します。
デザインでは、色使い、フォント、レイアウト、使用する画像やグラフィックに至るまでが一貫性を持ってブランドの価値観やメッセージを伝えるために選ばれる必要があります。高級なのか、親しみやすいのか、安全性が高いのか、流行の最先端なのか、デザインがブランドのイメージ作りに果たす役割は大きいのです。
一方で語られるストーリーも忘れてはいけません。ブランドの歴史や現在、そして未来へのビジョンをストーリーテリングの手法を用いて描くことで、読者はブランドの価値観を心に深く刻むことになります。
なお、長く印象に残る会社カタログのデザインについては下記の記事でも紹介しておりますので、参考にご覧ください。
会社案内の制作手順とコツ
ここからは実際に会社案内を制作する際の手順とコツについて解説していきますが、基本的にカタログの制作会社やデザイン会社などと進めることが一般的です。これからご紹介する制作手順についてはタクトシステムで実際に起こっている作業を例にご説明していきます。
会社案内の制作手順は大きく
- 企画・構成
- 誌面デザイン
- 折り方を決める
- データ作成
- 色校と印刷
という順番で行われます。それでは詳しく見ていきましょう。
1.目的を見据えた<企画・構成>
会社案内の役割の中で、どの目的で会社案内を作成したいのかを検討しましょう。
- 採用目的か営業目的か
- 読者ターゲット層(年齢・性別)は?ターゲットの利用シーン、配布方法は?
- 印刷をするかデジタルブックにするか
上記が固まったら掲載するコンテンツを決めます。
基本的な会社情報にプラスして、魅力が伝わるようなコンテンツがあると独自性が出ます。また、採用ツールとして使用する会社案内の場合は、部署や先輩社員の働き方など社内の雰囲気が分かるようなコンテンツがおすすめです。掲載するコンテンツの内容や量によって、会社案内のページ数・必要な写真やイラスト・サイズや製本方法が決まります。
コツ
デザインから決めずに事前準備をしましょう。
会社案内を誰にどのような内容を伝えたいのかを決めることで、効率的に魅力的な会社案内を作れます。
2.ブランドイメージを意識した<誌面デザイン>
全体の構成が固まったら誌面デザインへと進みます。
- デザインの方向性はカタログ制作の目的に合致しているか?
- 表紙のデザインはターゲットに刺さるか?
などに配慮して進めていきます。
会社案内の表紙デザインのパターン
手に取ってもらえる表紙とは、同業他社の会社案内と横並びになったとしても、目に留まり、役に立ちそうだという雰囲気を醸し出すものです。そのためにはビジュアル(視覚効果)をしっかり吟味することが必要です。
一般的にデザイナーがデザインを検討する際は、以下のようなことを意識します。
- 企業ロゴ周辺に十分な余白を取ること
- 印象的なビジュアルの組み立て
- 読みやすいキャッチコピー
- 認識しやすいメリハリのある配色といったことを意識します。
これを踏まえたうえで、表紙デザインにはいくつかパターンがあります。
写真ベース
写真ベースの表紙デザインでよく使われるのは、風景写真と自社の製品の写真です。風景写真で構成する場合は、他の会社案内などと雰囲気などが被らないように、複数の写真を組み合わせるなどの加工で、会社の持ち味や個性が出るように編集します。
また、普段、一般の人が見ることのできない工場の様子など、より詳しく知りたいと思わせる風景写真を選ぶ場合もあります。製造メーカーなどで、主力製品がある場合はその製品の写真を使用することがあります。

イメージベース
主にサービス事業を展開しており製品を持たない場合は、事業に関連したイメージを用いてデザインを作成することがあります。例として化学メーカーは幾何学模様、製図を行う会社は図面をイメージしたデザインを用いるなど、その会社の特徴が伝わりやすいものを素材としてデザインしていきます。
この場合は、イメージをメインに使用しつつ、下記で紹介するコーポレートカラーや企業ロゴも同時に用いて、複合的かつ効果的なデザインを組むことが多いといえます。

コーポレートカラーベース
企業にコーポレートカラーがある場合、メインカラーとして使用します。コーポレートカラーには企業の個性統一の意図もあり、それぞれのカラーには役割など、選ばれた理由があります。制作会社にデザインを依頼する際には、コーポレートカラーの成り立ちや、企業の価値観を共有しておくとよいでしょう。
企業ロゴベース
企業ロゴのみのデザインにするためには、ある程度の認知度が必要です。さらに、ロゴについてのガイドライン(VI規定)がある場合は、取り扱いに注意をしながらデザインをしていきます。
イラストベース
手作り感・親しみを感じさせる目的などでは、柔らかいタッチの手書きイラストは効果的です。フリーイラストの使用や新規発注をすることが一般的ですが、パブリックドメインを用いた事例もあります。パブリックドメインとは、創作者の没後、定められた著作権などの権利の保護期間が過ぎ、誰でも使うことができるようになった創作物のことで、著作者が著作権を放棄した場合にパブリックドメインになります。権利の保護期間は国により異なりますが、日本では原則70年です。
製品イメージベース
自社の主力製品をメインにデザインする製品イメージベースも、自社の強みをわかりやすくアピールすることができて効果的です。例えば、粉末や液体の調味料などでは、製品“そのもの”の見た目よりも製品パッケージの方が認識されやすい場合があります。
製品そのものの写真よりも、世間に認知されているイメージを利用するデザインです。

3.目的に応じた<折り方>
中綴じ冊子タイプ
中綴じ冊子は、基本のサイズがA4でページは8ページ、12ページなど4の倍数で構成するのが一般的です。会社案内として人気のタイプであり、ページをめくって読んでいくスタイルとなります。掲載したい情報量に応じてページ数を調整できるうえに、写真や紹介文などを見やすく載せられることがポイントです。

折り加工タイプ
二つ折りや三つ折り、四つ折りなど、折り加工を利用したカタログもおすすめです。冊子タイプとは異なり、簡易的な会社案内となりますが、コンパクトに伝えたい情報だけを掲載できることがポイントです。たとえば、商談で利用する場合など、じっくりとカタログを読んでもらう時間がないシーンでも、効率的に情報を伝えられます。

ポケットファイルタイプ
カタログをポケットファイルに入れるタイプも人気があります。ポケットファイルの内側にポケットが付いているため、複数のカタログを入れたり、名刺を入れたりするときに便利です。さらに、カタログや名刺のほか、DVDやノベルティを入れたい場合もポケット部分を活用できるため、相手に渡したいものが多いときにおすすめの仕様です。

コツ
他社の会社案内より目を引くためには、読み手となるターゲットに「面白そう」「自分にとって役立つ情報が載っていそう」と思ってもらうことが重要です。
4.随時確認・修正を行いながらの<データ作成>
デザインが固まったらDTPデータの作成を行っていきます。DTPとは原稿を紙面に落とし込んでいく作業のことです。初校・再校・念校と確認をし、修正があれば赤字を入れて戻すという作業を行うことで、間違いがなくクオリティが高いカタログに仕上がっていきます。
コツ 依頼時に事前に用意しておくモノ
・RFP(提案依頼書):目的、予算、ターゲット(読み手)、仕様など要望をまとめたもの
・VI規定(ロゴマークや配色の意味もわかれば調べておく)
・ライバル会社の会社案内・過去の自社の会社案内の変遷がわかるもの・具体的な希望があればビジュアルイメージのサンプル
特に、VI規定は制作会社が依頼する会社を知るために重要なものです。会社の理念や将来像を、会社案内に反映させるためにも準備しておきましょう。
5.少しの差も妥協しない<色校正から印刷へ>
本印刷前に、色校正を行い、色味の確認と最終確認をします。製品の色味には特に気を付けたいところで、ちょっとした配慮が大きな違いになります。
色校正の種類には複数の種類がありますが、予算と色味へのこだわりによって選択してください。校了になったら印刷、製本へと移り、カタログが完成します。
タクトシステムの制作事例

Person‘s株式会社様
ポケットフォルダーの会社案内です。
表紙は、人が協力しているイメージをハートを2 つ繋げてビジュアル化し、暖かい雰囲気に仕上げました。

ツカサ電工株式会社様
他社との差別化を図りたいというご要望で制作した会社案内です。手にした瞬間から「他社とは違う」と感じさせるために、変形サイズや特殊印刷など、差別化の要求に応える手法を多彩に提案しています。
まとめ
会社案内は、採用や営業など目的に応じて企業の魅力や信頼性を伝える重要なツールです。デザインやストーリー性を通じてブランドの価値観を表現し、読者とのつながりを築きます。構成やコンテンツ選定からデザイン、印刷に至るまで、目的を明確にしたうえで一貫性を持って進めることが、効果的な会社案内制作の鍵となります。