デザインは、あらゆるビジネスやプロジェクトにおいて不可欠な要素です。良いデザインは、自社の商品やサービスのイメージを高め、メッセージを効果的に伝えることができます。
しかし、どこから手を付ければいいのか、どのようにしてデザイナーに伝えればいいのか、これまで関わることがなかった企業の担当者がデザインを発注する際には多くの戸惑いがあります。
この記事では、デザイン制作の発注をスムーズに進めるために、どんなことをしたら良いのかを紹介します。
目次
発注する前に決めておきたいこと
目的とゴールの明確化(何のために作成するのか)
ポスターやチラシ、パンフレットやカタログ、書籍や教材などデザイン制作物は色々ありますが、まず、その媒体を通じて、何を伝えたいのか、どんな行動を促したいのかを明確にします。
それが、デザインの方向性を決定する基礎となるからです。
イベント開催を伝えるチラシであれば、集客につなげたいので、まず注目してもらうために、視覚的な効果、人目を集めることを考えるでしょう。
書籍の表紙なら、内容はちょっと難しいけど「その道のプロ」以外にも手にとってもらいたい、読者層を広げたい、という目的があれば、やさしそうな内容に見えるよう、デザインを考えるでしょう。
ターゲットの絞り込み(誰に見てもらいたいのか)
メッセージを届けたい相手は誰でしょうか? ターゲットをある程度絞り込みます。
誰に届けたいのか、誰=ターゲットを理解することで、彼らが関心を持ちやすいデザインを考えることができるからです。
子どもが見るのか、大人が見るのか、学生が見るのか、対象によって、選択する媒体も変わっていきます。効果的に伝えるためにも、ターゲットの絞り込みは、ある程度必要になります。
チームで取り組む場合は、社内での意見を一致させることも重要
デザインは個人の好みに左右されることが多々ありますが、目的が明確で方向性が一致していれば、好き嫌いを超えた視点から、チーム内でデザインの良し悪しが判断できます。判断基準を共有することで、一番効果的なものを選択することができるでしょう。
例えばこんな内容を書き出してみると、情報を整理することができます
・何のために
集客、告知、紹介、販売促進など目的は色々。
・誰に向けて
男性、女性、子ども、年齢などターゲット情報(ある程度は絞り込みたい)。
・いつ・どこで
使用される時期、季節、時間帯、利用する場所など。
・何を伝えるのか
価格、商品、企業案内、施設紹介、イベント告知など。
・どのように伝えるのか(どんな媒体が適しているか)
カタログ、パンフ、リーフレット、チラシ、web広告、動画、SNS。
上記のことが、全て決まっていなくても大丈夫です。
伝えるための媒体選択は、迷ってしまうことが多々あります。悩んでしまったら、制作会社と相談しながら進めていくとスムーズです。
目的やターゲットは決まっている、他にはどんなことを伝えたらいいの?
デザインの要素
必要なデザインの要素(例えば、色、形、フォント、イラスト、画像など)。
避けたいデザインの要素など。
デザインのスタイル
希望するデザインの雰囲気や色など。
提供する素材
ロゴ、画像、文字情報などの素材。
ロゴの場合、ロゴ規定があれば、一緒に提供しましょう。
ロゴ規定は企業によって様々です。例えば、次のようなことがあげられます。
単色の場合、4色の場合、2色の場合など、使用する色が指定されている。
一定の余白を保つことが決められている。
背景によって、ロゴの配色にバリエーションを設けている。
必ず白背景で使用する、と決まっている場合もあります。
最小サイズの規定を設けていたり、小さくなりすぎる場合は、ロゴマークではなく、ロゴタイプのみ使用する、といったこともあります。
例として弊社のロゴ規定をご覧ください。こちらは規定の一部抜粋ですが、ロゴが他の情報に埋没しないために、余白が指定されています。
ロゴは、見る人に与える印象を一定に保たなくてはいけません。
ロゴを見て、企業やブランドをイメージできるようになっていますので、使用する際には、企業の定めるロゴ規定に沿っているか、禁止事項に抵触していないか、必ず確認しなくてはいけません。
他にも、スケジュール、予算、納品形式などがありますが、
何を伝えたらいいのか悩んでしまったら、制作会社に相談してみましょう。
ほとんどの場合、制作開始前の打ち合わせで制作会社側から聞かれる内容なので、相談しながら進めていけば良いでしょう。
デザインのイメージを、伝えたつもりが伝わらない
文字や言葉だけでなく、視覚情報として伝わるイメージの共有も大切です
書籍の表紙デザインを発注した。
「20代の女性がターゲットの本なので、かわいい感じのデザインに!」と伝えた。
ターゲットも示されているし、希望するデザインの雰囲気も『かわいい感じ』と指示があるので、特に問題ないと思っていたのに…。
提案されたデザインがなんだか思っていた感じと違う…。
「これはいいね」と思うものが仕上がってこなかった。
これは、「かわいい」という言葉では抽象的すぎて、
発注者と制作者で認識にズレが生まれてしまっているためです。
かわいい雰囲気のデザイン制作の一例としては…
>色はパステルカラー
>フォントは丸ゴシック系
>形やイラストでは、ドットやストライプ 、チェック柄、動物や花、星やハートのモチーフなど、
「かわいい感じ」としては、上記のような要素が盛り込まれたデザインを提案されることが多いでしょう。
例えば、こんな感じです。
20代の女性が手に取りやすそうな、パステルカラーを使ったかわいらしい雰囲気です。
提案されたものが、発注側のイメージしている範囲のものなら問題ないのですが…書体は丸ゴシックではなくて、ちょっと違ったデザイン書体を使ってほしかったな、といった場合もあります。
他にも、動物じゃないのよ…動物は出してほしくなかったな…などのイメージの不一致もあるかもしれません。
これらのリクエストを伝えた後、次はこんな感じであがってきたとします。
擬人化した動物ではなく、女性のイラストを使うことで、さらにターゲットがわかりやすくなりました。また、デザイン書体を使うことで、やわらかさが追加され、女性らしさ、かわいらしさがアップしました。
でも、なんかちがう…。かわいいって言ったらピンク、ってどうなの?と思ってしまったり…。
と、感じることもあるでしょう。
しかし、伝えていなければ、配色イメージさえも合致しません。
もし、共有された情報にブルー系のビジュアルや多色使いのものが多く、ピンクが無ければ、ピンクの選択はないのかな? と制作会社のデザイナーは考えたことでしょう。
その場合、こんな提案があったかもしれません。
他には、制作会社側からも「青色のビジュアルが多いようですが、ピンクの配色はイメージではないですか?」とか、「青色ということは…20代女性の若々しさや透明感なども表現したい、などのお考えはありますか?」などの確認があったでしょう。
もし、手書き風のデザイン書体や、フリーハンド、曲線の視覚的イメージが多かった場合は、直線的なデザインは好まれないかな? と考えたことでしょう。
制作会社側からも、「シンプルでスタンダードな書体よりも、面白みのある書体をイメージされてますか?」などの確認があったでしょう。
人の頭の中は覗けないので、イメージをぴったり合わせるのは難しいことです。
言葉や文字だけでは伝えきれない情報があります。
そのため、「思っていたのと違うな…」が発生してしまいます。
言葉だけでは伝わりにくい内容は、参考画像などを使うと、より具体的に伝えることができます。
色や書体について詳細に説明しなくても、見ただけで「こんな雰囲気」「こんな空気感」がわかる、視覚的ツールを活用するのは、イメージ通り仕上げるための近道になります。
言葉だけで自分の思い描いていることを伝えるのは困難です。
認識のズレを完璧に避けることも難しいでしょう。
だからこそ、なるべく誤差をなくすために、視覚的な情報を共有することが大切になります。
カタログ職人のコンテンツ制作
「Canvaでデザインはできる? プロが教える効果的な活用術」
こちらのブログ記事では、イメージを伝える際のCanva活用術も紹介しています。
是非ご覧ください。
「これは違うな〜」を思い浮かべてみるのも大切
視覚的な情報を伝えた方が良いことはわかっているけど、これから作るものだし、見たこと無いものなんて探せないし、イメージもできないな…。という方もいるでしょう。
それならば、「これは違うな〜」を探してみる方法をおススメします。
最初に「これは違うな〜」を除外しておけば、デザインが仕上がってきた時に、「こうではなかった」が減り、「そうそう、こんな感じを求めてた!」の確率が上がります。
他には、具体的に「写真のイメージではない(写真は使いたくない)」「人物は出したくない」「イラストは使いたくない」「紫色はNG」など、デザイン要素として使いたくない選択肢は、最初に伝えることが大事です。
デザイン要素で迷った場合は、写真の案で1案、イラストの案でもう1案など、予め希望を伝えるのも良いでしょう。全部写真入り案で提案されてくる、なんてことはなくなります。
「これは違うな〜」のイメージを探せなくても大丈夫です。
制作開始前には必ず打ち合わせがあるので、その際のヒアリングで、ある程度すり合わせが可能でしょう。
まとめ
デザインに関わる機会がなかった方がデザイン発注をするのは、勝手がわからず戸惑ってしまうことが多いでしょう。
ですが、目的とゴールを設定し、必要な情報やイメージを共有して発注すれば、プロジェクトはスムーズに進行し、期待通りの結果を得ることができます。
この記事では、デザイン制作の発注をスムーズに進めるために、どんなことをしたら良いのかを解説しました。
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